「日本代表」が難しい存在である理由
目指すべきか、目指さざるべきか――岩政大樹の経験論
「現役目線」――サッカー選手、岩政大樹が書き下ろす、サッカーの常識への挑戦
■プロ選手と日本代表、どちらに心を置くか
僕は所属クラブにプロ選手として契約をしてもらい、日々を共にするチームメイトとサポートしてくださるスタッフやサポーターの皆さんと勝利のために全てを捧げます。そうして日々サッカーと向き合う中で、僕の中で「日本代表を目指す」という言葉にどこか違和感を覚えるようになっていったのです。
というのも、日本代表といえども、結局はその時の代表監督がチームを作る上で欲しいと思うピースであるかどうかが選出の分かれ目であって、そこには当然その監督の趣向が入り込みます。趣向は当然、所属クラブの監督とは違うものです。Jリーグで所属クラブのために一生懸命試合を戦いながら、「日本代表を目指す」というのは、誰に向かってサッカーをするのかという点で、どこか誠実さに欠ける気がして、器用ではない僕には何か違う気がしていました。
だから僕は、日本代表のためにサッカーをするのはやめようと考えました。日本代表という「人が選ぶもの」に自分の基準を設けず、自分の中の基準に忠実であろうと言い聞かせました。「日本代表を目指す」という言葉も封印し、一度も言わないようにしていました。
もうお気づきの方もいらっしゃると思います。そうです、これは僕の中の言い訳でした。僕は日本代表に入れない自分に言い訳を作っていたのです。
風向きが変わったのは、日本代表監督に岡田武史さんが就任されたときでした。2007年の年末に突如就任された岡田監督は最初の合宿でいきなり僕を日本代表に選んでくれました。僕の初代表でした。
しかし、Jリーグのタイトルを手にして意気揚々と迎えた僕の初代表は、それはそれは苦い思い出となりました。1か月に及ぶ期間中、僕は1分も出場を果たすことなく、練習においても自らの力不足を痛感するばかりでした。挙句の果てには、怪我で離脱することとなり、自分の前に開かれたと思った夢の扉は、手を掛けようとする間もなくどこかへ消え去ってしまいました。